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ミョウガ坂のお話その2 >>
割烹連載 ミョウガ坂のお話。その1。
2021-06-18 22:41:39  | コメント(3)
ミョウガ坂。今の子どもたちの間では、別の名前『ねこさか』がある町。歩道には頂点迄、緑化運動で配られたプランターがずらりと並ぶ。他の場所では、共に渡された、マリーゴールドやら、サルビアの花が夏らしく咲いているのだが、ここは緑のほよほよとした猫草が伸びている。
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頂上にある、一軒家の住民が等間隔に並べられたソレを、坂に住まう猫達の為に丁重に育てていると、もっぱらの評判だった。

……、猫。今朝は居ないなぁ。実物を見分し確認しようと思ってたのに。 町の中心部にある職場に向かう、スーツ姿の女性が、坂の前を横切る。一見すればOLなのだが、勤め先は『天理署』であり、階級は警部補という、見かけとは正反対の器を持つ硬派な彼女。 今日のお題を探すのを諦め、朝の風を切るように歩く彼女は、署内で『チクチク部』と呼ばれるサークルの部長。  

……、上からは早く上達をし、天理署のゆるキャラ『チバットママン』のキーホルダーを量産。交通安全運動の時に、イメージアップの為に配れと言われているのだけど……。  

絆創膏があちこち巻かれている、左の指先に目を落とした彼女。サークルに参加している面々も、一部を除き、皆同じ様な塩梅、どうしても針で指先を突いてしまうのだ。

今日こそは一点集中で乗り切らないと!気合を入れた彼女。遠くからニャ~ンと猫の鳴き声が聞こえた気がした朝。

「警部補ぉぉ!痛い!またまたまたまた!刺した!くぅぅぅ!!」  配属されたばかりの刑事が手始めに、入門キットをチクチク制作の途中、思いっきりブッ刺し、涙目で訴えてきた。  

「雑念があるからだ!集中しろ!」   

彼の指導担当がごっつい身体に似合わない、繊細なる針さばきで小さな三毛猫を、既に作り上げている。チクチク部の中でも、完成度が高い彼。 

「いやぁ……。なんで廊下のポスターに、『針一本で勇者になれる』って、書いてあるのかな。って思っちゃって。で!なんでですか?経費削減の為に、警部補がモデルになったとお聞きしてますが」  
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血玉ができた指先をレロレロ舐めながら、うらめしげに問いかけてきた。  ……、ぐっ!くそお!狙いが狂ったではないか!  精神集中に水をさされた彼女も、銀色の先を指先に深々と突き刺してしまった。ちろりと出てきた血をなめ取ると、新人の疑問に応える為に、一冊の雑誌を手渡す。

「これを見てどう思う?」  

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手渡された雑誌。パラパラとページをめくる彼に問いかける。 「……、可愛いですねぇ、癒やされますよ」

「でしょう、私も、四肢がバラバラにとっ散らかってたり、膨れてパンパンになったのとか、薬品や火災で目鼻口が分からない仏様の、生の現場を見たり、検証の為に写真をずーと眺めて、夢に出るほど覚え込んでるとね、心の安定の為に、こうした可愛い物を見て脳内に焼き付けておこうと思うの」

「ふえ!この町、そんな凶悪犯罪起こるのです?」
「自殺他殺含めて、極々時々ね。人間ですもの」

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「とぉぉ!って!ハムがしてるぅ!人間。うー、そうなんですね」 

「そう。強く正しく!人々に尽くす。私達は常にそうでなければならない。その為には日々の鍛錬を、コツコツと積み重ねなければ!」 
 
「それなら柔道とか、剣道でも……、精神鍛錬の行ありますし……。何故にミニチュアフェルトアート?」  

可愛いなぁ。と『モフモフハムちゃん大冒険』を眺めつつ、チクチク針を動かす周囲の同僚に聞いた彼。三毛猫を創り上げた指導担当が、次に使う羊毛を選びつつ教えた。

「フフフ。そうだな。フェルトアートはな、先ずは集中力が半端なく鍛えられる!そして何より重要なのは、ブツの再現、その為に要する観察眼を鍛えないとならない。何よりも、!ヘマをしたら己をブッ刺す、針先を恐れぬ勇気!特に完徹の翌日に作業するのが良い。空腹も睡魔も乗り越えた先に視える世界、その域に到達をすれば」 

ここで一度言葉を切った彼。ラストの一言を。と絆創膏を巻き終わった警部補に目で合図を送った。意を察した彼女は先を続けた。

「そう!フェルトアート製作のため、磨かれる鋭い観察眼、これはモンタージュ写真から、犯人逮捕に繋がる必須な能力。また、自白を導く為、矛盾の追求は為には、重箱の隅をつつく記憶力がいる。これも、作品製作の折に、見る数々のフォルムを脳内に焼き付け、ソレを忠実に再現する事により鍛えられる!そして小さいサイズになる程、自身で自らを突き刺す、ソレを跳ね除ける、一点集中の研ぎ澄まされた力!どれもこの町の平和を守る為には必須な能力!我々はどんな難関にも立ち向かわなくてはならない、なので日々の鍛錬は必須!」  

立ち上がると、部屋で背を丸めチクチクに励む仲間達を、鼓舞するように語った彼女。

「だから、針一本、有れば」

合点がいった彼がうけると。

「勇者になれる!」

チクチクの手を一斉に止めた署員達の、野太い声がひとつに合わさり、締めくくった。

明日に続く。(^O^)/

こっちで久しぶりに書き込んだら、なんか分からんエラー出たわー。www

塩谷様誤字脱字報告ありがとうございます(^O^)/

塩谷文庫歌様

何かやってますねー。www。ありがとうございます(^O^)/

なろうで一気に書いて分割して、足らずをたしてこちらに流してるので気がついたのですが、一気に流すと、みてみんブログ乗っ取り事件簿になることを、今、気がついたのですよ。_| ̄|○ il||li



佐々木龍様

よくよく考えたら、千文字✕十話で10000文字でしたよ。あっちの感覚で書き上げて、朝夕、割烹ネタで出そうかな←ちょっと待て。上から下まで危ない事になる!と今朝気が付きましたよ。

番外編とラスト書いたら終わりになるのですよー、(なろうの執筆中があれこれで、凄いことになってますwww)
投稿者:秋の桜子  [ 2021-06-19 11:45:17 ]


桜さん、なんかすげーことになってますね!
路肩に並ぶプランターの表現が、細部にこだわっているなあ、と思いました!!
投稿者:無限堂 ハルノ(佐々木 龍)  [ 2021-06-19 10:52:50 ]


「警部補ぉぉ!入門キッドではなく、入門キットです。子ども警察官になってまうやろ?」

「 重 箱 の 隅 つ つ く な や ! 」

明日が楽しみです!!
投稿者:  [ 2021-06-19 05:01:21 ]