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ミョウガ坂の裏話。
2021-06-26 18:13:05  | コメント(1)
平々凡々なる彼女の休日。警部補はお気に入りであり参考図書の一冊である雑誌の特別号を、ペラペラと眺めていて……。気がついた。

「あれ?こちらの作家さんはプロフィールに、住所上げられている!」

コツというか、どうすれば効率よく作れるのか。憧れのフェルトアーティストに、以前から話を聞いてみたいと思っていた彼女。

「もしかして……、会えるかもしれない!そして、あの人だったら♡」  

ミョウガ坂で出会い、一目惚れをした自転車の相手。住民台帳から調べたい欲望を、抑え込んでいる彼女。正々堂々と相手の事が判るのなら。こんな有り難い事はなかった。

早速、コラボ企画に参加されていた、ジオラマ作家の住所へと向かうことにする。

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……、この辺りなんだけど。
 
しごくありふれた住宅街で、雑誌のページに記されている住所を探していると。一軒の家から賑やかな音が響いていた。職業柄、どうしても気になり引き寄せられる様に、玄関先へと向かった彼女。

ギャァァァ。ギュぃィィィィ!ゴゴゴッ!おおおおー!くる!くるぅぅぅ!キュィィィィ!ガガガガ!!

「何!硬いものを削る音?ハンマーの破壊粉砕音も聞こえる!何が来るの?何をされてるの?このお宅。で!ここがその作家さんのお家?嘘!」

まさか……骨を粉砕とか?こんな真っ昼間に?

仕事上、サスペンスドラマの様な展開を妄想し、躊躇する事なく、呼び鈴を押す警部補。
 
作業音がピタリと止まり。出てこなければ、ポケットの携帯を確認していると。待つことしばらく……。

「はーい!、あ!こらこら、外に出てたの?いけないなあ。こらこら♡もう!登っちゃだめだよ……。大人しくしてるんだよ♡」

ガチャン。キィ……。朗らかな優しい声とともに、ドアが開かれた。即座、習慣で上から下まで視線を送り、脳内に映像を入れる休日の警部補。

年齢は成人男性。だけど少年みたいな感じ。悪い事をしている様子はない。砂まみれの白衣に、手にはハンマー、下は作業ズボンね。そして特筆すべきは、頭にハム?ゴールデンハムスター?違う!モルモットだわ!そういえば私、初めて見たわ!

フフン!上から目線を彼女に落とす、パーティーカラーのモルモット。

か!可愛い!ジッと凝るように、モルモットを見つめてしまった彼女。

「えっと、どちら様ですか?」
 
気さくに話しかけてきた主らしき男の声に、我に返ると手にした雑誌を見せ、氏名を名乗り来訪した目的を手短に話した彼女。

「ええ、知ってますよ。とりあえず中にどーぞ」

招かれ、お邪魔します……。バタン。ドアを閉めると振り返った警部補は、即座に身を逸らす。鼻先を通り過ぎる角材に反応したのだ!

「ええ!危ない!」
「うお!すみませんすみません。乾燥具合が気になって」

モルモットを乗せた彼が、玄関先にずらりと並べられた材木の一本を手に取り、反りを見ようとしたのだ。手にしていたハンマーは、下駄箱の上にゴトリと置かれていた。

「あの、それでですね……」

「あまみょん師匠の住所でしたっけ?えーとぉ。奥さんならちゃんと覚えてるんだけど、たしか猫が沢山いる坂の、てっぺんだったかな」

彼女の言葉をみなまで聞かず、返事を返した主。

「猫が沢山。わかりました。あともうひとつ。他の作品を見れる場所はありませんか?参考にしたいので。場所はなんとなく分かりました」

「良かった。奥さん今、ちょっと出かけてるんだ。他の作品は『クジャプロ(クジャクプロジェクション)』の、『書いちゃお!』の方じゃなく『見るルン!』の方で、勢力的に活躍されてますから、そちらでどうぞ」

ニコニコとする主とは対照的なモルモットの視線。急にふと。住所に不安を感じた彼女は、奥様は遅くなるのですか?と、下駄箱の上のハンマーに、ちらりと視線をやり問い掛けた。

「僕が急に、ふんわりサクサクメロンパンが食べたいって頼んだから、お買い物に行ってるんです。それとクローバーの収穫と……、少しばかり遅くなるかもしれません。ハンマーはね。僕は今、化石のクリーニングをやっていて、ですね。それが!とっても珍しい物が、ひょっこり出てきそうな感じが、プンプンするのですよ!」

目をキラキラさせて話す主。クローバーは、こいつご飯なんですよ。と頭の上の警戒心顕なモルモットを指指す。上がって待ちますか?の好意に、大丈夫です。と応じると、そそくさとお礼を述べて外に出た警部補。

職業柄、交わした会話を分析してしまう彼女。抱き締めた雑誌を開き、プロフィールの欄に目をやる。

作家、フェルトアーティスト。
プライベートは、非公開。癒やしの存在は、猫と酒。主に、クジャクプロジェクションで活躍中。

……、あまみょん師匠って、呼んでらしたわね。あまみょん……。白衣、頭上のかわゆしモルモット、不意打ちな行動。しかしイケメン、誠実な対応。彼の好感度は良い。モルモット可愛い。師匠の癒やしは猫と酒。……、モルモット可愛い。

背後の家から再びの作業音。その場に留まり携帯を取り出すと、教えられたサイトを開いた彼女。さらりと見た『書いちゃお!』では、硬派で興味を引くタイトルの執筆作品の数々。そして『見てるん!』の方の、怒涛のアート作品の数々!

……、あまみょん、みょうがさん、あまりん、あまりっり……。女性ファンも男性ファンも多し。ハシブトウミガラスがスターター?ムリムリ。あ!デッカイと作れるかな……。だめだ、黒豆になんかそれらしきものが、くっついたのになりそう。リクエストは、常時募集中って。綺麗な手をしている。そう。ミステリアスに包まれてた方が、いいかも知れない。

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そう思い切る、休日の警部補。あの時、あの場所で絆創膏の彼に差し出したイケメンなあの人が、そうだったら良いのに、心に宿った淡い気持ちを振り切る様に声を出す。

「強く正しく!恋心など、正義の道を行く私には必要ない!どんな難関にも!己の力で立ち向かわなくては!自らを高めるための修行に、匠からの教えを請うなど、いけないこと!」

胸に抱きしめてた雑誌を小脇に抱え直すと、緑の生け垣が濃くなった住宅街をさっそうと歩き進んだ。
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ミョウガ坂。ただ一度、彼女が出逢った、涼しげな彼。

「恋心など!正義の味方には、無用の長物なの!!そう……!モルモットを飼いましょう」

言い放ち再び携帯を開くと、モルモットが販売されてる店を検索し始めた。

真っ赤な百日紅の花が、くしゃくしゃと笑って、モコモコと咲いていた、夏の午後。

今度こそおわり(^O^)/

登場された、イケメンなメンズなお二方には(だれ?ホホホ、オーホホホ♪)、お礼を申し上げ、ミョウガ坂を使わせて頂き、佐々木龍様、ありがとうございました。裏話を書きたいがために、本編を書いたのです(^O^)/

▽ イチオシレビュー

[ 針一本有れば勇者になれる! ]
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「警部補!電柱に掲示物が勝手に貼られたと電力会社から通報がありました」
「はぁ?そんなことでいちいち警察が……場所は?」
「ミョウガ坂ですね」

最近、奇怪な都市伝説が噂されている場所だ、通勤で毎朝通る。
今日も通ってきたけれど気付かなかった――?

「少し気になります、見に行きましょう」

パトカーで現地へ到着、見上げると坂の途中に確かに1枚ある。
若い男が興味深そうに見詰めていたが、こちらへ気付くと鞄をかごに入れ、サッと自転車に跨った。
シシャーッと坂を下って、擦れ違っていく。

ハンドルを握っていた警部補は、すぐに路肩へ車両を停車した。

「降りて追って!それと……あなたは周辺で聞き込みを」
「警部補は?」

「証拠の確保、というか。掲示物を取り外しておきます」

すぐに後部座席にいた2名が自転車の青年を追った。
助手席を降りた刑事が近くにいた小学生女児2名を呼び止めて話を聞き、どこかへ案内されていくようだ。

さて、と徐行運転で看板へ寄せた警部補が、ダッシュボードから制帽を手に取って被りながら近づく。

「 な に こ れ ? 」

そこには経費削減の為に駆り出された自分のポスターが掲げられていた。

仰天していると、さきほどの刑事が「この御夫人だそうです!」と、一人の女性を連れて坂をのぼってくる。

「母さん! ……どうして?」
「あなたが目立つところにところに貼っておいて、って言ったんじゃないの」

「町内会館とか、他に選択肢があったでしょ?!」
「できるだけ目立つところがいいと思ったからよ」

「違法行為で職員募集して、どんな人材が確保できるのよ」
「……職員募集?素敵な男性との出逢いじゃなかったの?」

「頼んだ募集広告は、このコピーしたやつよ?!」


現在 天理署では『ねこさかの赤い原チャリオトコ』解決に向けて御町内の平和を守る職員を募集中です。皆様お誘い合わせのうえ奮ってお申し込みくださいますよう、ご案内申し上げます。 [ 天 理 署 ]

「あぁ……こっちなの?」


ここはミョウガ坂、こどもたちが『ねこさか』と呼ぶ坂。
丁寧に舗装された路上に、緑化運動で配られたプランターがずらりと並び、緑のほよほよとした猫草が伸びている。
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作品タイトル:ミョウガ坂のお話
作者:秋の桜子さま
投稿者:  [ 2021-06-27 16:28:11 ]