2019-08-28 13:07:30
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(  ̄▽ ̄)スッパい総督閣下からのネタ。タイトル詐欺でーす。
マリーゴールドは酷使される
近年コンパニオンプランツで有名なマリーゴールド。フレンチ、アフリカン、レモン、様々な品種があるのは、ホームセンターで種袋を見れば一目瞭然。
何しろ丈夫、真夏を乗り越え、霜が降りるまで元気溌剌に花を咲かせる。流石は聖母マリアの祭日に産まれた花、マリーゴールド。
畑で作業をしていて、うっかり鎌で数本刈ってしまった、棄てようかと考えたが、黄色にオレンジ、ビタミンカラーの夏の花が惜しく、家に持って帰り、ありあわせのグラスに生けた。
香りが強い。花も茎も葉も全てマリーゴールドの香り。握り帰ってきた手も、その香りが染み付いている。手を洗う、香りが満ちる、蛇口から降りる水。シンクに出来る水の流れ、水とマリーゴールド。太陽の光とマリーゴールド。キイロとおれんじ。
キッチンの窓近くに置かれた、キイロとおれんじ、人間の営みが終わり、灯が落とされ、セレニティの光がふありと二人を包む。
透明なグラス述中に射し込む清らかな光、水がクリアになる。女神の力が淡く混ざり、糧を吸い込み、花の記憶が蘇る。昔はるかオリンポスの時。
まぁ……!あなたもあのお方を。
キイロがさめざめとおれんじに話す。
うん………そうなの
おれんじがしんみりと答えた。
二人はアポロンに恋したニンフと、美少年だった。
女神が微笑む。夜長話しをしてもらいましょうと、空からそれらを眺める。
キイロの物語。
セレニティは空から眺めていた。
地上の色恋、原色の様なあれこれ、わたくしとエンディミオンとはまるで違うから騒ぎ。どうしてそうなるの?
女神は優雅に、そして無邪気に見下ろしていた。
ああなんて事を、私はなんてことを、クリスティは駆けつけた場所で地に伏せた。掘り起こされた湿った土の匂いが、禍々しく彼女を包む。
「どうすれば、どうすればいいの?ハデス王の元に逝ってしまえば、もうこちらにはもどって来れない。ああ、私は彼女にどう償えばいいの?苦しかったてましょう、苦しかったでしょう。王女レウトコエ、父王に生き埋めにされるとは」
許して。こんなつもりではなかったの、人間の娘なのにあのお方のお心を掴んで離さない、貴方の邪魔だったの。だから、人間の娘は、人間の男の元に嫁げばいいのに、そうしたら私を見てくれるかもしれないって。
「私よ、私が貴方とあのお方の事を、王に告げ口したの、二人は恋仲だって、貴方は塔に閉じ込められた。明かりが入らない、塗り込められ中に」
それで時がすぎれば、胸に焼き付く炎が薄くなるまで、二人が離れていたらと、なのにどうして?なぜなの?捉えて、一夜と経たずに土の中に、墓穴を掘るための時を稼ぐ為に閉じ込めたの?
許して、気高く美しい王女レウトコエ、愚かな私を許して、アポロン様と貴方の中を羨んで、くだらない横槍を入れた私を許して。
「許してくれないわ、アポロン様は私のことを、許してくれないわ、くれないの………アポロン様の、愛しい人を殺してしまったのだから」
さめざめと泣くクリスティ、ニンフの彼女は太陽神、アポロンに恋こがれていた。埋められた大地の上に座り込む。やがて時が動く。
セレニティは姿を隠した。アポロンが姿を表した。どうなるのかしら、女神は夜を待つ。
夜が来る。
「まあ、あの娘あの場に、日の下で、ずっと空を眺めていたの………」
座り込んた場所そのままな姿。それは次の日も、次の日も、微動だにしない。動かないクリスティ、アポロンをじっと眺め続ける。
やがて彼女の髪も、体も次第に黄色く染まっていった、
九日の日が沈んだ、セレニティはそろりと地上を見る。クリスティの姿はそこにはなかった。
黄色いマリーゴールドが空に顔を向けて、夜風に揺れていた。
おれんじ「そんなことがあったの、僕は違うけれど」
キイロ 「許してもらえるのかしら、私酷いことをしてしまったの、とてもトテモ、愛していたお方に、だから、だから、ずっと眺めていたの、貴方はどうして?」
おれんじの話
そういえば、何日も何日も雲が空にかかっていた事があったわね。セレニティは、おれんじの話に耳を傾けながら、懐かしく昔を思い出しました。
ゼフィロスが旅の途中で、女神に教えてくれました。空がここ数日厚い雲に覆われている理由を。
「まぁ、そんな事が?彼はどうなりましたの?」
女神は無邪気に、地上の話を楽しむ。
クレムノンは、美しい少年でした。彼はいつも空を見上げていました。彼は太陽神のアポロンに、密かな想いを寄せていたのです。
アポロンは空から彼を眺めていました。彼もまた、いつしか美しいクレムノンの事をそれを知り、姿を日々眺めるにつれ、恋しく想っていたからです。優しく彼を見るアポロン。
心を込めて見上げている美しい少年。二人の甘い時、それを、よく思わぬ者がいました。白き衣、茜色の衣、時に黒き衣をまとう、雲の女神です。
空には、わたくしというものもいますのに、あんな人間の子供に、おもしろくありませんわ、少し意地悪をしましょう。
女神はイライラとしながら手をひとふり、彼女の子供達がもくもくと姿を表します。空を覆いなさい、厚く、厚く覆い尽くしない、地上に太陽の光が差し込まぬように。女神はそう命じました。
雲が二人を遮りました。毎日、毎日、黄金の光を恋い焦がれ、切なく空を見上げ続けるクレムノン。アポロンの神殿の前で、空に祈りを捧げました。眠る事も、食事をする事も何もかも忘れて祈り続け、やがてそのまま冷たい眠りにつきました。
憂さが晴れたのか、雲が消えます。明るい日差しが地上に届きました。地面に伏せる少年の姿を、温かい光が包み込みました。
哀れに思ったアポロンが、彼をオレンジのマリーゴールドの花へと姿を変えたのです。
キイロ 「まあ、なんて可哀想な………」
おれんじ「うん、気がついたら花になってた」
キイロは、過去の罪を思い出し、体を震わせました。
おれんじは、寂しかった時が胸にきて、ふるふると、揺れました。
月が中天を過ぎ、時が進んで行く。差し込む光が逃げげた。キイロとおれんじは、夜明けを焦がれる。ほんの少し思い出した今なら、思いの丈を届けられると思った。
セレニティは、クスクスと笑う。過ぎ去った過去は、取り戻せないのだから、美しい思い出と共に、眠りにつけば良い。エンディミオンの様に。
それにしても………多くの言葉を持つ花。
花言葉は、一途な愛、悲嘆、絶望、可憐な愛情、予言、真心………そして、勇者。
コンパニオンプランツ、マリーゴールド。聖母マリアの祭日に産まれた花。
土中に住む、ネコブセンチュウに、その身に含まれる成分が効くというマリーゴールド。
美しく花を咲かせた後も、春に咲く蓮華草の様に、花が終えたら、畑に漉きこまれる。
そして、次の季節をまた彩る。
ハロウィンいたずらイラストでご一緒だった、銀しゃり役のすみのさんの、『冬のひまわり』というのもありますぜ( ̄▽ ̄)
「アートの借景」企画 参加作品です〜